「此処っ・・・どうなってんのよ!!」
 私は呻きながら階段を登って行った。
 いや、瓦礫の山を登ったと言ったほうが妥当だと思う。
 そしてやっと着いた頂上。
 ・・・そこにいたのは、10歳前後ほどの少年だった。





Cherish ――― Steel bird






「居たぞ、
「うん・・・」
 はっきり言って、もう疲れてます。
 だけど私はあの鳥の飼い主を見てみた。
 ほんの10歳ほどの少年。
 短い黒髪をしていて、こっちの様子を窺っている。

「あんたたち、誰?」
 私たちを睨んでる。
 子供ながら、恐ろしい目をしてるなぁなんて客観的に思ってしまった。
 ・・・あれ?
 今何かを思い出しそうな気がしたけど・・・気のせいかな。

「オレらはエクソシスト、聖職者さ」
「そうそう、そんなに警戒しないでよ」
 げっ、さっきの鳥が少年の肩に留まった。
 白黒のコントラストは目を光らせてこっちを見ている。

「あんたたちも俺を殺しに来たんだろ!?この街の奴らみたいに!!」
 鳥が飛び立った。
 ・・・私の方を見て、そのまま向かってきた!

「だから、話を聞いてよ!」
 私はファルチェ型のルナを振りかざした。
 鳥は見事ぶつかったけど、尚も速度を緩めなかった。
「おいおい、あぶねぇぞー?」
 なんて言って、大きくさせた槌を私の前に向けた。
 槌は完全に私を隠し、鳥はぶつかった後で少年の方に帰っていく。
「どーも、ラビ。その槌面白いねー!」
それ褒めてんの?!」
 なんて言ってるけど、どうやら楽しそう。
「ブチのめして話そうさ」
「そんな時間ないよ。アクマが来たら余計困るしね」
 そう言って、少年に向かって歩いた。

「なっ、なんだよ!!!」
 ビクッと震えてる。
 でも鳥をこっちに向かわせようが、私は武器を振る気はない。
「お願いだから、聞いて」
 至近距離まで、近づいた。
 鳥を良く見る・・・胸のところに十字架の模様がある。

「やっぱり・・・イノセンス」
 ラビは後ろから戦闘体勢に入ってるけど、大丈夫だと思う。

「この鳥、どうしたの?」
「・・・え?」
 笑顔で言うと、少し警戒を解いたみたい。
 少年は躊躇いながらも、
「なんか・・・いつの間にか俺の家に居たんだよ!」
「・・・貴方、適合者ね。」

 この鳥、良く見ると機械のよう。
 一応毛はあるみたいだけど、内面は鋼みたい。
 鋭いくちばしが、根から先まで真っ赤に染まっていた。
 きっとこれで心臓を抉れば一撃だろう。
 ・・・それにしても、イノセンスがあると飛んだりするんだ・・・。

「私、。あっちはラビね」
 貴方の名前は?そう訊くと少年はこっちを睨んでたけど、
「・・・・・・リタ」
 目を逸らして呟いた。



「リタ、エクソシストにならない?」
「はぁ?何言ってんのあんた?」
 うっわぁ・・・生意気。
 まぁとりあえずイノセンスは見つかった・・・ラビに報告ね。
 振り返ろうと立ち上がったときだった。

「イノセンスだったんですか?」
 ふと、ラビの後ろに居るファインダーさんが聞いてきた・・・なんで満面の笑みを?
 ズズズッと瞬時に顔がねじれ、“殺”と書かれた銃器が現れた。
 見慣れた風景 ―― あいつ、アクマだ。

「ラビ!!!」
 私の叫び声で気付いたのか、既に気付いてたのか。
 ラビの対応は早かった。
 槌を素早く回して全ての銃弾を防いだ。
 もちろん私も。後ろで驚いてたリタを護りながら防いだ。
!場所が悪いさぁ」なんて言いながら、私の隣に並んだ。
 まさか、ファインダーさんがアクマになってたなんて誰が思う?
 とにかく外に出たほうが良いよね。此処は狭くて戦いづらい!

 もう1本、アストロをリリースして唱える。
「カテーナ!」
 すると2本は素早く鎖で繋がった。
「飛び降りるか?」
「それしか方法はないでしょ!?」
 リタの手を握る。

「ちょっ、なんだよ!!」
 暴れないでよ、時間がないの!
「良く掴んでないと落ちるからね!!!」
 グッと力を入れ、窓に目をやった。


 一瞬、たったの一瞬。
 アクマの攻撃が止んだ。


「今だ!」
 ラビの声に私は走り出した。

 ガラスが全て抜け落ちてる窓を飛び越え、

「なっ!?ぅわぁぁぁぁっ!!!!」

 リタの悲鳴を聴きながら地に向かって全速で落ちた!