この潰れた街の中にイノセンスがあるかもしれない。
 そんなことを言ったのは一体誰よ?
・・・コムイさんだけど。
 今回は私とラビでこっそりと捜査だって。
 アクマが現れたらそこにイノセンスがある証拠だし、倒せって。
 ファインダーさんも動いてるらしいんだけど、その街がなんとも大きいのなんのって。
 だから、私たちも密かな捜査なんだって。

 思いっきり暴れたかったのにな〜。残念!
 まぁ、イノセンスなら別よね。頑張ろう!!





Cherish ――― Duty






ってさ、トシいくつ?」
「え?」

 此処は上級車両の一室。
 団服にある胸の十字架だけでこんな良い席を用意してもらえるなんて、嬉しい限りよ。

「16歳だよ」
「うそぉ!?」
「・・・なによ」
 なんで驚くかなぁ、ラビ。
「だって、リナリーと同い年なのにガキじゃん!」
「・・・・・・」

 言ったわね。言いやがったわね。

「悪かったわねェ、ガキで!!!」
「なぁぁっ!?」

 ドゴォッ!!と大きな音が鳴り、ラビの顔の隣に穴が開いた。
「・・・、細い腕の何処にそんな力を秘めてるんさ?」
 私が殴って空けた穴。
「・・・ガキとか子供呼ばわりされると、ムカつくのよね」
 ラビはちょっと驚いた顔を崩すことはなかった。
 実は私は少し力持ち。
 普通は穴なんて空けないよ?でもガキとか呼ばれたら暴れたくなって。
ってすげぇ!」
「あはは・・・ありがと」
 褒められた気がしないのはなぜだろう・・・

 とにかく・・・私とラビを乗せた列車は、目的地に近づいていた。





「・・・此処ですか」
「此処ですね」
 ラビの言葉に答えてあげた。

 一応街の中に入ってみたは良いけど・・・とても荒れ果てている。
 さらに、道に迷いそうなほど広い。
 逆に何で人が誰も居ないのか、疑問になってきた。
「流行り病とかで全滅したのかな」
「それはねェだろ」
 ラビがせせら笑った。
「戦争さ。じゃないとこんなに建物がボロボロにならないっしょ?」

 確かに、いろんなところに瓦礫の山が出来てる。
 ボロボロになっていて、所々に血だまりのあとが出来ている。

「戦争って・・・アクマでしょ?」
「あ、やっぱり?」
 私は辺りを見回した。
 ・・・この広い街の、何処にイノセンスがあるわけ?
 つかあるの!?徐々に不安にさえなってくる。

 こうして、私とラビの宝探しが始まった・・・んだけど。


「見つかんない!!」
「こっちもないさー」
 私たちは色々見ては、そんなことを言っていた。
 せめて、何処にあるのかがわかれば良いのに・・・
 例えばアクマが集まってたり、ファインダーさんがいっぱい居たり。
 そういう光景が見えたら、そこにある証拠なんだけどなぁ・・・

「あ、!」
 不意に、ラビが呼んだ。
 振り返ると手招きをしている。
「何?」
「あそこ見ろって!!」
 ラビが指差した先は、空。
 高い建物よりも低い位置に、何かが浮いていた。
「なにあれ!アクマ?」
「とにかく行ってみようぜ」
 ラビは楽しそうに槌を振り回した。
 ちょっ、いつの間に発動させてたんだろ。
 驚いてた私の腕を引っ張り、何かが浮いているところに近づいてみた。


「と、鳥?」
 私の言葉に頷くラビ。
 浮いていたのは1羽の鳥だった。白と黒のコントラストで・・・こっちを見てる?
「・・・ラビ、下」
「ん?
ぅおあっ!?
 吃驚すると思った。
 だって、鳥の真下に死体が山積みしている。
 服からして、ファインダーさんだ。
「一人、生きてる」
 私は指を指した。
 鳥が見ていたのは私たちじゃなくて、少し前に居る一人の捜索部隊さんだったんだ。

 私は瞬時に“ルナ”をリリースさせた。

「あ、え、エクソシストが来てくれた!!」
 たった一人のファインダーさんは、咄嗟に私たちの元に駆け出した。
「後ろっ!!!」
 ファインダーさんが動き出した途端、鳥がベクトルを向けて向かってきた。
「満、満、満、満!」
 ラビがそう唱え、槌をとても大きくさせた。
「二人とも伏せろぉ〜!!!」
 ニッと笑って、ラビはとても大きな槌を振った。
 ブォンッ、と空振りの音がした。
 どうやら鳥は危険を察知してブレーキをかけたんだろう。
 ファインダーさんは無事、私たちの元に駆け寄ってくることが出来た。

「とりあえず場所を変えようよ」
「あぁ、そうだな」
 私たちは近くにあった建物へ走り出した。


 ビルの中は相変わらずぐちゃぐちゃだ。
 奥まで行き、鳥から隠れるように瓦礫の下に潜り込む。
「さぁー説明してもらおうか!」
 ラビの言葉に頷く。
 ファインダーさんはガタガタ震えながら、次のように話した。
「じ、実は・・・あの鳥がイノセンスなんです!」
「「・・・はい?」」

 あ、あの鳥が!?

「誰かもう適合者が居るとか?」
 私の言葉に、おそらくと言う言葉を付けて頷いた。
「じゃーなんでオレらを襲うんだぁ?」
 真下に居たファインダーさんたちを含め、全部あの鳥がやったことだと思う。
 ・・・そういえば、この街はアクマか何かで全滅したんだっけ。

「・・・ひょっとして、私たちを街を破壊した人と勘違いしたとか?」
「そんなことがあるんですか?」
「いや、ありえると思うけどなぁ」
 ファインダーとはいえ、同じ服の人が大勢居たら勘違いするのもわかると思う。

「とにかく主犯を見つけねェとな」
 ラビの言う通りね。
 私は見上げてみた。
「この建物の上ね・・・。見晴らしが良いところから攻撃してると思う」
「さすが、その通りさぁ」


 とりあえず私とラビ、そしてファインダーさんはこのビルのような建物の最上階へと向かった。