帰ってきたと思ったら、早速任務!?
もっとゆっくりしてたかったなぁ、部屋で寝ることも出来ないじゃん。
それより何より、問題というか心配事が一つ。
初めてコンビを組む人なんだけど・・・“ラビ”って誰??
「ちゃん、ご苦労だったね」
メガネをかけて、ほんわかした印象を与えがちなのが、コムイ・リーさん。
科学班の室長なんだけど、何考えてんのかがわかんないから怖い。
「コムイさん、任務報告です!」
そして私はさっきまで行ってきた任務について報告をした。
行ってきた街にはイノセンスは愚か、何もなかった。
挙句の果てに“エクソシスト”がなんなのかもわかってなかった、と。
「そっかー」
ちょっとがっかりしたようにコムイさんは行って、そしてまた笑顔に戻った。
「まぁいっか!他の街を捜索してみるよ」
「そうですか」
う〜ん、お役に立てなくてちょっと申し訳ないかも。
でも謝るようなことは言わない。いつだって、そうだからね。
「じゃあ私、部屋で休んできまーす!!」
どうせ当分ないでしょ、任務♪
そそくさと研究室を出て行こうとしたんだけど・・・ガシッと、手を掴まれた。
「ちゃん、悪いんだけどね」
にっこり微笑まれ、やっぱり釣られてしまう。
だけどコムイさんの言葉を聞いて、その笑顔すら凍ってしまった。
「これから、至急任務に出て欲しいんだ♪」
「・・・はぃ?」
・・・なんだってぇぇ!?
思わずバンッと机を叩いてしまった。
「ちょっ、コムイさん!?私帰ってきてまだ部屋にも入ってないんですよ!?」
「うん、ごめんね〜」
「あ、アレンは?!」
「アレンくんは神田くんと任務に出たよ」
うっ!!
ちゃ、ちゃんと出てたんだ任務・・・人使いが荒いよ、コムイさん・・・
「・・・じゃあ私一人ですか・・・」
「いや、ちゃん一人じゃないんだけどね。」
「・・・ふぇ?」
コムイさんは微笑んだまま、その人の名前みたいなものを言った。
「ちゃんはラビとコンビを組んでもらうつもりだよ」
「・・・ラビ?」
ラビって、誰??
初めて聞く名前に、思わず首をかしげてしまった。
コムイさんは「ラビのこと知らなかったっけ?」って意外そうに言った。
「誰ですか?」
「じゃあちゃん連れて来てくれる?本部内に居るし、特徴があるヤツだからさ」
「え?」
“ラビ”って人の特徴を聞いていた私は、しっかりと頭の中に入れた。
確か、背が高くて赤毛でバンダナ巻いてて眼帯してて・・・って、
見なかったっけ!?そんな人!?
「じゃあちゃん、見つけたらここに連れてきてね。任務の説明をするから」
「・・・は、はぁ・・・」
とにかくその人をもう一回見つけなきゃ!!
私は踵を返して走り始めた。
・・・と言っても、此処は総本部だからめちゃくちゃ広い。
徐々に速度を落としてた私は、やがて立ち止まってしまった。
「これ、本当に見つかるの・・・?」
途方に暮れてたときだった。
神様が居るとしたら、これほどまでに感謝をしたいと思ったことはなかった。
「っあ――――――っ!!!!!!!!!!」
一階下で吹き抜けを間に挟んだ先、あそこに赤毛でバンダナ巻いてる人が居る!!!!
私の視力は最高に良いのよ。間違いないわ!!
だけど“ラビ”って人が私のために立ち止まってくれるわけもない。
スタスタと歩いてまた何処かに行かれるのがオチだわ。私は両腕を掲げた。
「リリース!」
呟くと両手の先から光が溢れ、ブレスレットから私の対アクマ武器が現れた。
“ルナ”と“アストロ”と呼ばれる二つの鎌は、長い長い鎖で繋がれている。
私はこれの鎖鎌を「カテーナ」と呼んでいる。
後二つの顔があるんだけど、カテーナで充分だわ。
ブンブンッと勢い良く振りをつけ、思いっきり“ルナ”を目的地へ投げた。
素早く進んでいった一本の鎌は、“ラビ”って人の真ん前を瞬時に通り過ぎて、そのまま壁にぶつかった。
ガッ!て音が響き、向こう側の人はみんな吃驚してる。
あ、“ラビ”って人がこっち向いた!うん、眼帯もつけてるっ!!
私はあらん限りの声を出した。
「コラ――――――そこの赤毛のあなたっ!!!」
我ながら凄い声を出してしまった。
「今から向かうからそこに居るようにっ!!!!!」
吃驚してる。だけどもっと吃驚するかな。
私は手すりを跨ぎ、ジャンプした。
ガガガッと“ルナ”は床を削った、けど落ちるわけもなく。
ターザンのようにぶら下がった私は凄い速さで吹き抜けを横切った。
ちょうど良いタイミングで手を離し、手すりに捕まってよじ登る。
「はぁ〜〜疲れたっ!!!!」
よく考えたらさぁ、私任務終えて帰ってきたばっかじゃない。
なにやってんだろ・・・と呆れながらも対アクマ武器をブレスレットの中に戻した。
さて、後ろに居る“ラビ”って人はどうしてるかな?
振り返ってみると、案の定・・・吃驚して一歩も動いてなかった。
「す、」
「す?」
私より20センチほど高い身長の人は、私に負けずとも劣らない声を張り上げた。
「すげーさアンタっ!!!大道芸人かなんか?」
「・・・・・・はぁ?」
・・・変な人。
なんて思ったのは秘密ね。
敢えてその言葉を流して、訊いてみた。
「貴方が“ラビ”?」
「ん?」
・・・返事がない。「はい」か「いいえ」くらい言ってくれないかなぁ・・・
はっ!!まさか人違いだったりして!!コムイさんが企画した「ラビを探せ!」とか?
なんて思ってた私を現実世界に引き戻したのはこの赤毛のお兄さん。
「あ!もしかしてってアンタのこと?」
「へ?何で知ってるの?」
言ったっけ?私。
なんてとぼけた考えをしたことを恥じてしまいそうになった。
「アレンが言ってたのさ〜」
「アレン?あなたアレンと知り合いなんだ?」
「まぁね」
アレンかぁ〜・・・うっ、神田と一緒の任務、可哀想。
帰ったら何か奢ってやるかぁなんて同情心が湧き出てしまった。
「さっきの答え」
「へっ?何?」
あっ、ニコッと微笑んでくれた。
この笑顔、確か前にすれ違ったときに見た。デジャヴかな?なんちゃって。
「ラビっす。よろしく、」
「・・・よろしく!」
やっぱりこの人が“ラビ”だった。
でも、さっきの答えって・・・ひょっとして私がラビ?って訊いたことかな。
「ねぇ、なんて呼んだらいい?」
「普通にラビでいーよ。オレもって呼ぶし」
それにしても、とラビが続けた。
「“”って名前、珍しいねェ」
「そう?本当の名前じゃないもん」
本当の名前は、確かエクソシストになったときに捨てたんだっけ。
・・・あれ、何て名前だったっけ?
つか、なんで捨てたんだろう??
だけどラビは驚くどころか、「ふーん」位のリアクションだった。
「オレもさぁ」
「そうなんだ?」
やっぱり私も大して驚かない。
・・・って、ほのぼのとしてる場合じゃなかった!!
「さてラビ!コムイさんの所に行こー!」
「お?」
有無を言わさずマフラーをガシッと掴み、ズルズル引っ張って連れて行く。
コムイさんとリナリーちゃんの所に行かないとね。
とりあえず、任務でしょ。
その後でゆっくりラビに「初めまして」って言おうかな。