小さな街にあったのは、大きな銅像でした。

 少女は何を思いましたか? なぜそんな表情をしているのですか?





Beatrice ――― presagio -予感-






 イタリアの中にある、ごく普通の小規模な街。
 そこは少しも賑わっていない街だった。
 初めて行く街をとても楽しみにしていたは、少しがっかりしているようだ。
「まぁ、そんなもんさ」
「そうですよ、
 なんて言ってるラビとアレンは、そんなの様子を見て笑っていた。

 店はあるものの、賑わうどころか人すら入っていない。
 アクマが襲っている街だから当然だとは思うが、それでも期待をしていたは少し悲しそうだ。
 しかしこの街に来た目的は違う。
 3人は銅像の様子を見に行くことに決めた。

 銅像は、街の中心部に位置していた。
 大きく街を占領し、また幻想的なものでもあった。
 15歳ほどの少女が蹲っていて、背中には羽根が生えている。
 しかし目は閉じられていて、憂いと切なさの表情を浮かべている。
 その隣には少女よりも年上の少年が空を向いて両手を伸ばしていた。
 どうやら絶えず涙を流しているようだ。
 空には虹が架かり、地面からは綺麗な花畑が広がっていた。

 綺麗な景色だが、2人の男女はとても悲しそうに思えた。

「へぇ〜・・・綺麗ですね・・・」
 アレンの声に、ラビは頷く。
「すっげぇ〜・・・」
 感嘆をあげるほど見惚れていた。
 それほど人の目を奪う銅像だったのだ。

 ・・・しかし、少女の瞳だけは可笑しかった。
「な、・・・・・・?」
 ラビの声にも反応しないで、ただ呆然と銅像を見ていた。
 その目は見惚れるというよりも、驚きを表現しているようだった・・・。
 の様子を見ていたラビは、何も言わず、再び銅像を見る。

 銅像の2人は、やはり表情を変えてはいなかった。





 アレンの提案により、宿に泊まることに。
 しかし店主も居ないため、無断宿泊となるが誰も文句を言わなかった。
 やがて朱色を帯び始めた空を、殺風景な部屋から一人、は見つめていた。
 窓を見上げ、その瞳は教団の人々に会う時のように生気が無かった。

 音も無く、目を閉じる。


 一方、隣の部屋にラビとアレンは宿泊していた。
「それにしても綺麗な銅像でしたねー・・・・・・ラビ?」
 アレンの言葉も耳に入らないラビは、何処か胸騒ぎを感じた。
「ラビ??どうしたんです?」
 きょとんとしたアレンに、こう答えた。

「なぁアレン。オレ、ちょーっとヤバイかも」
「へ?何がです?ラビ??」

 アレンにはわからなかったが、ラビは再び口を噤んで窓を見上げた。


 相変わらず、空は朱色を深めていた。





 もう時間が無いことくらい、2人には解っていた。

 もっと欲しかった。 もっと、一緒に居たかった。

 目を閉じた少女から流れたのは、それが叶わないという証。