・・・う、わ・・・

 私は思わず感嘆を洩らしてしまった。





Vacancy -放心-






 ジェリーさんから貰ったお菓子を食べて、私はしばらく味に夢中になってしまった。
 “みたらし団子”って言うんだって。
 初めて食べたんだけど、すっごく甘くて美味しかった!!!

 私たちがよく食べるお菓子って言えば、チョコレートやケーキじゃない?
 だけどこれも美味しかった!!

「これジェリーさんが作ったの!?」
「まぁね♪ど〜ぉ?ちゃんのお口にあったかしら?」
 ジェリーさんが言うに、試作品なんだって。
 だけど私はチョコレートなどとは違う甘さに惚れ惚れしてしまった。

「・・・ちゃん?」
 しばらく放心状態になっていた私を引き戻したのは、やっぱり“みたらし団子”ってやつ。
 甘くて美味しいんだもんっ!放心状態にもなるって!!

「ジェリーさんっ、まだありますか!?」
 ありったけの“みたらし団子”を貰って、私は向かうはラビの元。
 こんな美味しいもの、私一人で味わっちゃだめだよね!!


「ラ〜ビっ!!」
「ぅおっ!?」
 バァンッと、半ば蹴破るようにラビの部屋のドアを開けた。
 ラビはと言うと、ベッドの上で読書をしてたみたい。
 めちゃくちゃ吃驚したような表情を浮かべてる辺り、夢中になってたんだなぁなんて思ってしまう。
 だけど、そんなことより手に持つお盆よ!
 私は気にすることなく、満面の笑みで言った。
「ジェリーさんから“みたらし団子”ってやつ貰ってきたぁ!!」
「・・・は?」


 ベッドの上に、お盆を乗せていた。
 真ん中のお皿にはみたらし団子、そして“緑茶”っていうお茶も貰ってきたんだ!
「・・・緑色だぞ、これ・・・」
「でも丁度良い渋みでお菓子に合うんだって♪」
 ラビは警戒してたけど、私は全然警戒心なんて持たなかった。
 だってジェリーさんから貰ったんだもん!コムイさんから貰ったものなら警戒も持つけどね。

「まぁまぁ食べてみてよ♪」
 恐る恐るだけど、私に促がされてラビも一口食べた。

 ・・・あ、放心状態。
 でしょ!?やっぱなるもんだわ。

「うめぇ!!!」
「やっぱり!?」
 さっき食べたけど、また摘む。
 ・・・・・・食べすぎかなぁ?

 さすがラビ!解るわねっ!!
 緑茶も甘さに合ってて、美味しかったぁっ!!!

「警戒心を持っていた何処かさんがバカみたいね〜♪」
、失礼さ」
「だってそうじゃない。ジェリーさんが作ったんだもん、これ」
 ラビはその言葉に黙ってみたらし団子を一口ほおばった。

「それにしてもさ、これ神田の故郷の菓子だろ?」
「・・・へ?」


 あ、あの神田の!?

 確か、前に飲んだ神田の故郷のお茶がめちゃくちゃ苦かったような・・・?

「そうなんだ!?」
「“和菓子”って言うんさ」
「ほぉ〜、なんでも知ってんのね、ラビって」
「伊達にブックマンの跡継ぎになってないさ〜」
 自慢気に言ってるけど・・・それって関係あるの?とか思っちゃったりして。

「それにしても、初めて神田が羨ましいって思ったなぁ〜」
「なんで?」
 ラビの言葉に、笑顔で答えた。
「だってね、ほかにもいっぱい“和菓子”ってヤツを食べてたんでしょ!?」

 ・・・あれ?
 なんでラビの反応がないんだろう?

「・・・らしいけどさ・・・」
「へ?何?何なの!?」

 すると途端に笑い出してしまった。
 ちょっ、ラビったら酷くない!?笑うなんて!!


 そのあとも“みたらし団子”を二人で食べて、間食してしまった。
 かなりの量があったんだけどなぁ・・・

 翌日、当然体重が増えちゃった私は当分“和菓子”を口に入れることはなかった。