別に、ただ単に乗ってみただけなんだ。
バスタオル一枚だったから、服の重さがない分尚更ショックだった。
「う゛・・・マジ?」
確かに最近食べ過ぎてた。だってジェリーさんのご飯美味しいんだもん!!
でもさ、現実に目を向けないといけないよね。
そんで乗ってみたら案の定。
「・・・よっ、42キロ・・・?」
3キロも増えてる!?嘘でしょ!?
これが、3日前の出来事。
あの日から、ほぼ断食のような減量ダイエットをしているわけなんだけど・・・
3日も経てば、結構きつい。
実際顔色も悪いみたいで、リナリーちゃんが驚いて「ど、どうしたの!?」って訊いてくる始末。
「ん?・・・ダイエット、してんの・・・」
あちゃあ、元気も出ない。
リナリーちゃんは「が?そこまで太ってないとおもうよ??」って言ってくれる。
でも、その言葉に甘えてたから3キロも太ったわけよ。
・・そんなに顔色が悪いのか、アレンやジェリーさんにも言われてしまった。
でも、肝心のラビに会わないから良かったと思わなくちゃ。
だって、言えるわけないじゃない!
3キロも太ったなんて言ったら絶対からかわれるに決まってる。
「わっ・・・フラフラする・・・」
薄暗い廊下を歩いてても、解る。
ちょっときつ過ぎたかなぁ。3キロなんてすぐやせると思ってきつめのダイエットにしたんだけど・・・
「あれー?」
げっ!!今一番聞きたくない声が聴こえた。
恐る恐る振り返ると、少し向こうに立っていたのは・・・のんびりした表情のラビ。
絶対からかわれてたまるか!!
私は走り出した。
「うえぇっ!?何で逃げるんさー!?」
ショックを受けたラビの声が木霊する。
でも捕まるわけには行かない!!
余力を振り絞って此処から逃げた。
ふと、後ろを見ると・・・えっ!!!
「なんで追ってくんのよ!!」
「だってが逃げるからさぁ!!」
頑張って走っても、力なんて出るわけない。
徐々に速度が遅くなる・・・うわ、気が遠く・・・
もう少しでラビの手が届く距離で、グラッと身体が揺れた。
「おいおい!?」
ギリギリラビに抱きかかえられ、私は倒れてしまった―――――・・・
薄っすらと目を開けた私が見たのは、見覚えのある天井だった。
「・・・えっ!?」
ガバッと起き上がると、やっぱり私の部屋だって解った。
あれ!?私なんで自分の部屋で寝てるんだろ?!
「あ、起きたー?」
「へ!?」
声のした方を見た私は、唖然とした。
らっ・・・ラビ・・・
「で、なんで俺から逃げたんさ?」
ちょっとむすっとした表情をしたラビは椅子の背もたれに肘と顎を乗せて呟いた。
「・・・えっと・・・あの・・・」
言えない、マジで。
でも逃げられない。うぅ〜どうしよう!!
「言わないつもりか?目の前で倒れたくせにさ」
「へっ?倒れた!?」
あ、だから記憶がなかったんだ。
ラビが此処まで運んでくれたんだ・・・どうやら私は言わざるを得ない状況みたい。
「・・・実は、」
からかわれるのを覚悟して、ありのままを話してみた・・・。
ラビの反応は、とても意外なものだった。
「・・・ふーん、痩せてるじゃん」
「3キロは大きいの」
笑うかと思ったけど、普通の反応を示していた。
「大丈夫っしょ?さっき抱き上げたときも重くなかったし」
「でも3キロは・・・え?」
だ、抱き上げた!?私をラビが!?
ラビはにっこり笑顔で続けた。
「寧ろもう少し太った方がいいさ!」
抱き上げたって・・・なんかすっごい恥ずかしい!
でも、ラビの笑顔を見たら今までの頑張りなんて必要ないのかな、って思えてしまった。
それ以来、少し量は減らしたものの、無理なダイエットをすることを止めた。
からかわれると思ってたけど、ラビの言葉があったから思いつめなくて良いことに気付けたんだよね。
・・・ちょっと見る目変わるかも。
そう思った私は、思わず首を横に振ってしまったけどね。