コムイさん、大変なのは良くわかります。
 だからって会うなり絡むのはよしてください。
 ・・・だって、ラビが怒るんだもん。





Nettle -苛立ち-





ちゃああん!!!」


 研究室に来るなりこれ。
 仕事しまくりのコムイさんがギューッと抱きついてくる。
「・・・なんですか?」
「ちょっと癒してー!!」
「はぁ?」
 リナリーちゃんがいるでしょ?
 そう言うとコムイさんは泣きながら
「リナリーは嫌がるんだよー!!」なんて叫んだ。


 ・・・だからって、なんで私に抱きついてくるのか。
 つか、癒してってどうやって癒せばいいんだか?
「癒してあげたいのは山々ですけど、どうやってするんですか?」
ちゃんに抱きついてさえいれば僕は疲れなんて」
“吹っ飛ぶ”までは聴こえなかった。

 何かがぶつかり、奇声を上げながら飛んでいった。・・・あ、吹っ飛んだって言ったほうが良いかな。

「コムイさん?」
 急に居なくなったようなものだから、私は

 ドオオオォォン!!っていう轟音のした方を思わず見てしまった。

 ・・・大きな槌が、コムイさんの前にあった。
 ちなみに衝撃でコンピュータが壊れ、リーバーさんの悲痛な悲鳴も聞こえてくる。

 ラビの槌?なんでこんなところにあるんだろう。
 シュンッと槌は消え、そこには瓦礫と共に伸びたコムイさんが目を回して倒れていた。

「こっ、コムイさん大丈夫ですか!?」
 これには私も吃驚してしまった。
 コムイさんの元に向かおうとしたけど、左手をグイッと引っ張られてそれは出来なかった。

「コムイー、借りてくから」
「えっ、ラビ!?」
 聴こえてないだろうコムイさんに言って、有無を言わさず私を引っ張って行った。
 ズルズルと左手を引っ張られる私は、コムイさんが可哀想で仕方なかったりして。




「ちょっと、ラビ!?」
「・・・・・・」
「ラビってば!!痛い〜〜!!」
 大声で叫んでも、ラビは前を向いたままだった。
 スタスタと私の歩くペースより早く、引っ張られるから小走りになってしまう。
 それより何より、あのラビが何も話さずに黙々と引っ張って歩く姿が・・・何だか、怖い。

 ラビ、なんか怒ってる!?
 逃げたい・・・この空気に耐えられない私は心底そう思った。



 薄暗く長い廊下を私は引っ張られて走る。
 痛い、腕・・・ラビが怖い〜・・・
 
 そして、向かった先は私の部屋。
 乱暴に開け、そして乱暴に私は部屋に入れられた。
「わっ!」
 バタンッと乱暴にドアを閉める。

 ・・・うぅ、気まずい。
 私なにしたっけ!?最近はラビをからかうこともしてないはず!!



「・・・
「ぅわはい!?」
 ほっ、本当に怖い・・・
 声色が低く、目が怒ってる。

「何やってたわけ?」
「・・・・・・へ?」
 私には、ラビは何のことを言ってるのか分からなかった。
「たまたまオレが研究室に来てみれば、はコムイに抱き締められてさ」
「・・・いやあの、ラビ?」
「コムイもコムイだけど、も避けねぇとダメだろ?」


 ・・・いやいや、私のせい?
 つかなんでラビが怒ってるの?・・・怖いし。


「で、でもギュッてしてあげてまたやる気が出るんなら、それで・・・」
「甘いさ、
「えっ?」

 怖いくらい怒ってたラビは、私の左手を掴んで、

「ひゃっ!」
 そのまま抱き締めた。

「ちょっ、ラビ?」
 動揺する私の頭上で、ラビは叫んだ。

「あーもう苛つくなぁ!!!」


「えっ!?」

 わ、力・・・強い。

はオレのものなんさ!」


 この言葉で、解った。


「・・・まさか、嫉妬してたわけ?」
 ビクッとラビの身体が揺れた。
 今までの行動、全てそうなんだ。そう思うと少し可笑しくなってしまった。
「笑うなっ」
 今度は怒ってなく、照れたような言い方だ。

 こんなラビ、初めてだなぁ。
 そう思って私は背中に腕を回してあげた。

「ラビ、か〜わいい♪」
にだけは言われたくねぇ言葉だな」


 それにしても、意外な一面を発見してしまった。
 コムイさんには感謝ね。・・・でも。

 あのラビは怖かったなぁ・・・ちょっと気をつけなきゃ。