教団本部に帰る列車の中。
 さすがはエクソシスト、上級車両だから個室です。
 なのでうとうとする気持ちもわかる、大いにね。
 向かい側に座るラビが、眠たそうにしてた。





Kiss -キス-





「ラビー・・・寝ていいよ」
 だってあんまりにも眠そうで、頭がグラグラしてんだもん。
 でもラビは顔を上げて、
「いや、寝ねェさ!」
「そう?」

 そう言って、5分も経たないうちにうとうとし始める。

 なにをそう頑固になってんだか。
 でも今のラビがちょっと面白いから、そんなラビと風景を交互に見ていた。


 20分ほど経過したとき、チラッとラビの方を見てみた。
 あ・・・寝てる。

 壁に頭を傾け、上向きで寝てるラビはなんだか可愛らしい。

「あんなに寝たがらなかったくせに、ね」
 ラビを起こさないように小さく笑う。
 疲れてたんだね。
 確か立て続けに任務についてたんだっけ、ラビは。
「・・・お疲れ様です」
 微笑ましいなんて思う私はヘンかなぁ?

 ・・・それにしても、気持ちよさそうに寝てるなぁ。
 あっ、油性マジックでも持ってればよかった。
 ちょっと後悔ー・・・まぁいいや。
 私は滅多に見たことがないラビの寝顔を堪能しておいた。


 やがて、列車も目的地にたどり着く。
 終点までたどり着いた私は、外から伝えてくれたファインダーさんに頷いた。

「・・・さて。この人どうしよう」
 思いっきり寝入っちゃってます、ラビさん。
 こうなったら本当に油性マジックが欲しかった、なんて思ったりして。



「おーいラビー起きなよー!」
 呼びかけても反応なし。うーん、相当深い眠りについてるのかな。
 疲れてるから仕方ないよね。
「ラビ、着いたよ?」
 肩を揺らしてもびくともしない。

 ・・・疲れてるし、ねぇ・・・

「ラビーラビラビ!!!」

 呼びかけながら肩を揺らす。



 ・・・まだ寝るか。
 疲れてるとかは理由にならなくなってきた!

「ラビ、起きて!」
 と呼びかけてた私は、ふと思い立った。

 相も変わらず、上を向いて眠ってる・・・。
 別に、寝てるしね。
 起きないヤツが悪いんだ。
 ニヤッと不敵に笑った私は、両サイドの髪を耳にかけた。



 髪が落ちないように、そのまま耳に手を当てて、立ち上がる。
 そのまま、向かいに座るラビに近寄り・・・



 キス、してやった。



 小さくちゅっ、と音が鳴る。ちょっと恥ずかしくなる。
 でも、

「寝てるやつが悪いんだよ・・・」
 ふふっと微笑んでしまった。


 その時、突如私の両腕を掴んでそのまま後ろに押された。
「わっ・・・!!」


 ダンッと押され、そのまま上に被さってくる。
「なっ!?」
 ラビ!?
「起きてたの!?」
 ライトから逆光となったラビが微笑んだのがわかる。
「あんな揺さぶられて起きない奴はいないさ」

 うわっ・・・恥ずかしい!!

 そう思ってると、わっ!ラビの顔が近づいてきた。

 さっき私がやったとおり、唇を重ねてきやがった。

「んっ!?んー!!」
 バタバタさせると、やがて離れてくれる。


「何?」
 ご満悦な笑顔を浮かべてるラビは、舌を出してべーってした。
「ちょっ・・・何、す・・・」
もさっきしたじゃん」
「それはっ!」
 ラビが寝てたから悪戯程度に・・・!!

「・・・意地悪」
「続きされたい?」
 えっ!そんなわけないじゃない!!
 そのまんま言ってやると、ラビは笑顔を崩さずに「帰ってしようね♪」なんて言って出て行った。

 や・・・やられた・・・


?早く出ないと列車が出るぞー?」
 再びラビがやってくるまで、私はそのまんまの体制でボーっとしてたりして。