私には一つの野望があったりなかったり。
アレンが前、「ラビの槌で飛んで病院に行った」って言ってた。
・・・槌で空を飛ぶなんて、良い!!
乗りたい!!私は最近そう思って仕方がなかった。
「ラビ・・・」
遠慮がちに呼んでみた。
ラビは「ん?」って振り向く。
「何?」
「あのさぁ・・・」
あくまで遠慮がちに。
だってラビが乗せてくれるかどうかわかんないんだもん。
「アレンがね、ラビの槌で空を飛んだって言ってたんだけど・・・」
ホント?って聞くと、あぁ!と頷いた。
「マジさぁ!めちゃくちゃ気持ちいーぜ!」
「うそ!!いいなぁ〜・・・」
乗りたい・・・・・・乗りたい乗りたい乗りたい・・・
なんて思いながらラビの腿に目をやる。
小さいサイズの槌が黒光りしてた。
そんな私を見て、乗りたいことに気付いたのかラビが言ってくれた。
「乗る?」
「えっ!いいの!?」
「いいけどさぁ〜、はいいんだな?」
「・・・私は乗りたい!!」
さっきの言葉には引っかかったものの、私は好奇心に負けた。
だって槌が空を飛ぶんだよ!?
乗りたい!!乗って空を飛びたい!!
「・・・、目がキラキラしてんぞ?」
そんなに乗りたいのか・・・とラビはため息を付いた。
そして今夜!!
遂に私は乗せてくれるんだって!!
塔のベランダで、ラビは槌を発動させた。
大きな槌・・・これが、空を飛ぶのかぁ!!
先の十字架をザクッと床に深く刺した。
「じゃー跨って」
「うんっ♪」
槌の柄のとこに跨り、後ろにラビが座った。
「よく捕まってろよー!」
「任せてっ♪」
ギュッと柄を握る。
ラビが言った。
「大槌小槌・・・伸!」
その言葉に反応して、瞬く間に槌の柄が伸びた。
凄い速さで空へ向かい、広がるスカートを両手で押さえた私は吃驚した表情から一変させた。
「ぅわぁ〜〜〜〜っ!!!」
すごいすごい!!!
私とラビは魔女のように、長い柄に跨って飛んでいた。
「ラビ、すごーい!!」
「だろだろー?」
下を見ると、森が広がっていた。
月がとても大きく、綺麗に見える。
風が気持ち良いなぁ〜なんて思って、後ろを向く。
「ラビっていつもこんな風景を見てるの!?」
「まぁな・・・って!あぶねぇなぁ〜」
大丈夫大丈夫!
落ちないよ、って片手離してみる。
後に街の明かりが見え始めた。
伸びる槌はとても早い。
「きゃ〜〜〜〜気持ち良いっ!!!」
アレンもこんな空の旅を満喫したのかな?
私は彼が大変な目にあったのも知らなかったからそう思ってしまった。
・・・だけど、手段としてはとても良いけど・・・。
私は徐々に飽きはじめた。
「・・・ねぇラビ、一旦降りてみようよ!」
「う゛えぇ〜・・・?」
ラビはなんか嫌そうな表情をした。
「なに?」
「いや、降りるのはいいけどさ・・・」
なんか降りたくなさそう。
「何か嫌なことでもあるの?」
う〜ん、となんか考えてる。
「・・・の髪、良い匂いするからさぁ」
閃いたように言うバカ。私は思わず自分の頭を抑えてしまった。
「変態!?」
「そりゃねぇだろ!?」
あ、ちょっとショック受けてる。
「じゃー降りるぞ?」
「うん」
このとき私は、あんな降り方するなんて知らなかった。
街外れで、ガッシャーン!!という大きい音が聞こえるのは時間の問題だった。
「やっぱブレーキ加減が難しいなー」
「・・・・・・あんた・・・・・・なんか他に言うことないの?」
壁に突っ込んだから、全身がズキズキする。
後にアレンから訊いたんだけど、彼のときも突っ込んだらしい。
そこまで聞いとけばよかった・・・・・・。