「っ♪」
呼ばれたほうに振り向いてみる。
ラビがニコッと微笑んでいた。
「・・・何?」
なんか裏がある笑顔のような気がする。
案の定、森の中まで連れてこられた私は呆然としてしまった。
「・・・・・・ねぇ、なんで森にいるわけ?」
手を引っ張られ、最初は黙ってた私も徐々に顔色が悪くなる。
ラビはと言うと、涼しい顔をしたまま私を導いている。
「まーまーついて来いって!」
そして森の中に入って5分ほど経ったときだった。
ラビは立ち止まって振り返る。
「、対アクマ武器出して!」
「はっ?」
不審に思いながらも、素直に私は左手をかざした。
「・・・・・・リリース・・・」
光を放ち、左手に大鎌が現れた。
「・・・ファルチェでよければ」
「サンキュー」
ラビは私からルナを受け取った。
実はこの鎌、一本でも少し重いらしい。
並大抵の人は持ち上げられないんだけど・・・さすがラビ、槌で慣らしてるだけある。
ひょいっと持ち上げた。
「いよーし、頑張るさぁっ!!」
団服の袖を折って、ラビはルナを・・・木に向かって切りかかる。
ザンッ、ザンッと何度も木に切りかかった。
「ちょっ、何やってんの!?」
「んー?アレンがさ、大木が欲しいっつってたからやろうと思って。」
「・・・あのさ、鎌は斧じゃないんだけど」
「ダイジョブダイジョブ!」
「大丈夫じゃないっ!!!」
ラビは尚もルナで木を切り続けた。
斧じゃないとはいえ、鋭い刃で少しずつ木に切り込みを入れていった。
あぁ〜〜〜・・・刃が痛む・・・ごめんねルナ〜〜!!
私は、後でコムイさんのところに持って行かないと、そう思った。
まぁイノセンスだからそこまで脆くないんだけどね。
私はただラビが木を切ってる様子を見ていた。
・・・だけど。
「なにやってんのさ、!」
「へ?」
ちょっと疲れてるラビが私の方を向いた。なんだろ?
「もう一本あるだろ?手伝えって!」
「・・・・・・なんだって?」
この一言、それで私の堪忍袋の緒が切れた。
何も言わずここに連れて来て、あまつさえルナを使っておきながら私(+アストロ)まで使わせるか!!!
遂に、私はキレた。
「・・・ラビ、槌貸して♪」
「槌?」
ラビは木にルナを刺したまま、手を離した。
「良いけど、何に使うんさ?」
腿に装備してる槌を取り、通常サイズにさせる。
「・・・槌、大きくして」
「は?」
不審に思ったラビは、私と同じように素直に従った。
「・・・大槌小槌、」
満、満、満と三回言うと槌は大きくなった。
「はい」
「ありがとー♪」
満面の笑みで槌を受け取る。
重さ?こんなもの軽いわよ。
私の怒りの方が重く大きいわよ!!
「・・・?」
なにやら私の笑みに怖さがあったのか、ラビは少し苦笑い気味に呼んだ。
今更おせーわよ!!!
私は赤毛のバカ頭に向かって思いっきり振り下ろしてやった。
「こンのバカラビ――――――――!!!!!!!!!!!」
「い゛っっっっ!!!!!!!!」
ガァァァァン!!!!!ととても良い響きが森の中に木霊した。
頭からとても痛い衝撃を受けたラビは、身体を半分ほど埋めて気絶していた。
「・・・・・・ふぅ。スッキリ♪」
刺さりっ放しのルナを抜き、私は槌を投げ捨てて帰ってやった。
因みに、別にルナは木に刺したくらいじゃ刃は痛まなかった。
少し悪いことをしたかな、と思ったけど・・・・・・自業自得よね。
案の定、ラビは夜になっても姿を見せることはなかった。