私の頭脳を持ってしても、解らないことはある。
 錬金術のことなら何でもわかるのに・・・なんかヤダ。





恋愛のイロハ






「なぁ!」
「・・・なに?」
 
 実験も調合も終わり、私は席を立つ。
 後ろには音もなくトレインが立っていた。
 さすが黒猫。忍び足は得意なのね。

「また新しい弾薬作ってくれよ」
「えぇ〜・・・前に作ってあげたじゃない。それはどうしたのよ?」
「使っちまった!」
「・・・はやっ!!」

 前に私が作ったのは“CFブレッド”といい、私の特製薬で混乱させるもの。
 大作だったのに、もう使い切ったの!?

「当分作らないわよ!」
「なんでだよ!」
「スヴェンに作ってもらえば?」

 私のほかにもスヴェンだって作ってるんだから、なんでトレインは私に言うんだか。
 だけどきょとんとしたトレインから言われたのは、

「だってよ、が特別作ってくれたほうが嬉しいんだ」
「・・・・・・え?」

 ドキッとさせる言葉だった。

「・・・・・・し、しょうがないなぁ・・・」
 え?何言ってんの私?

「やった!!サンキューっ!!」
「ハイハイ」

 作る気なんてなかったのに、なんで了承を得ちゃったんだろう!!


 トレインが部屋を出た後、私は後悔した。
「・・・あぁ、なんであんな言葉に喜んじゃったんだろ・・・」

 何も解らなかった私は一人椅子に座って頭を抱えた。

 一から実験と調合を始めなくては。やっと終わったと思ったのに・・・

 でも、嬉しかったんだもん。
 了承したからには仕方ない、頑張ろうか。



 恋愛感情がなんなのかもわかってなかった私は、何で嬉しかったのかは解らない。
 でも、今はそんな事いいかな。


「もう一回作ろうかな、CFブレッド♪」

 トレインのために、頑張ってやろう!!

 私は洗ったばっかりのフラスコを持ち、もう一度調合を始めた。