このお話は、トレインの身長が10歳のときくらいまで縮んだときのこと。
トレインの背が縮んだことにより、少し変わったことがある。
私が「可愛い〜〜!!」ばかり言うようになっちゃったんだよね。
調合は錬金術において、欠かせないものである。
その言葉どおり、私は今日も調合を楽しんでいた。
特技であり、趣味であり、日々の勉強と発見である調合の邪魔は何であろうと出来ない。
やり始めたら、集中しちゃうんだよね。
とは言っても、ささやかな会話ならできるため、呼ばれると返事を返してしまう。
「ー!」
「何?」
ガチャッと開かれたドアの向こうにはトレインの姿が。
見向きもしなかったけど、声でわかるのよね。
・・・ただ、今のトレインはいつもより声が高めだけど。
私の問いに答えるように、トレインは元気に言った。
「買い物でも行かねぇ!?暇なんだよ!!」
「・・・あのさぁトレイン。今調合中・・・なんだけど」
うっ゛、見なきゃよかった!!
めちゃくちゃ可愛いっ!!イヴが弟にしたい気持ちがわかるわっ!!!
「なぁ〜行こうぜっ!も息抜きが必要だろ!?」
そこまで必死に言わなくても良いのに。
・・・別に急な調合でもないし、まぁいっか!
普通のトレインならそんな事思わないのに。
だって調合を途中止めにすると、何処までやったか分からなくなって最初から始めるのがオチよ。
よっぽどのことがない限り、やめようと思わないのに・・・
でも・・・でも、ちっちゃいトレインが可愛いんだもん!まぁいっか。
私は子供サイズのトレインと街へ買い物に出かけることにした。
「で、何が欲しいの?」
私の言葉にトレインははしゃぎながら「わかんねぇ!」って言った。
「はぁ!?何も決めてないのに誘ったの!?」
「は何か欲しいもんあるか?」
「・・・へ、私?」
私の欲しいもの・・・ねぇ?
う〜ん、特にないけど強いて言うなら・・・
「・・服かな」
「よし決まり!」
私より小さいのにトレインは手を引き、買い物を始めた。
・・・この人って、背は縮んでも全く変わらないのね。
確かに今のトレインって可愛い。だけど、やっぱりトレインはいつもの方がいいかもしれないわ。
あ、理由はもうひとつあるのよ。
「見てみてトレイン!!これ可愛いんじゃない?」
ワンピースを見せてみる。
「おー!良いんじゃねぇか?・・・でもよ、。それ小さすぎねぇか?」
確かに彼の言うとおり、私のサイズには合わない。
「イヴにだよ」
イヴならぴったりだと思う!買ってあげたいなぁ〜♪
トレインもそれなら良いと思ったのか、
「姫っちならピッタリだよな!」って笑った。
「・・・トレインでも着れるんじゃない?」
「はぁっ!?お前それ本気で言ってんのか!?」
「嘘よ」
必死で嫌な顔するんだもん、面白いわ〜♪
イヴ用に買ってあげようとレジに持って行くと、店員さんは笑顔で「ご姉弟ですか?」って言った。
・・・なるほどね。この身長差だと姉弟に見えるのか。
説明も出来ないし、とりあえず適当に頷いておくことにした。
「ねぇ〜トレイン。店員さんに姉弟と間違われたよー」
するとトレインは感心そうな表情を見せて、「周りからはそう映るんだな、俺ら」って言った。
20歳と10歳だから、少し無理はあってもそう見えるのかな。
歩いてると、通りかかるみんなが見る。
やっぱトレインって子供だと可愛いのね。
・・・大きくたって子供っぽいけど。
それから、私たちは色々見て回ったわけだけど、みんながみんな「姉弟」かと思っていた。
・・・ただ一人を除いては。
「ー、どっかで休もうぜ、疲れた!!」
後ろからするトレインの声に、振り返る。
「そうね、じゃあ喫茶店とか入る?」
「おう!」
私たちを見ていたおばさんが、見かねて言った一言で私は後にショックを受けてしまった。
「あらあら、可愛らしい息子さんねぇ。」
・・・へっ!?息子?!
その言葉に我が耳を疑ってしまった。
「・・・ト、トレイン今・・・あの人なんて言った?」
「ん?“息子”だな」
・・・そんなきょとんとしながら言わないでよ・・・
「む・・・むす、こ・・・」
こう見えて私、20歳なんだけど・・・
トレインはトレインであははと笑ってる。
「ねぇトレイン、私って10歳の息子が居るように見える?」
「さぁ?俺はしらねぇ」
・・・トレインのバカ・・・なんかガラにもなく落ち込んでしまった・・・
「・・・?おーい?」
「へ?・・・何?」
だめだ、これ以上ヘコんでたら絶対ダメよね。
「あ、お店ね。喫茶店入ろっか!」
“息子”発言のショックはまだ冷めてないけど、平然を装うことにした。
だってトレインと一緒だもん。からかわれちゃうしね。
・・・でも、やっぱりトレインにはわかってたのかな。
喫茶店に着いて、第一声を発したのはトレインだった。
「なぁ、そんなにショックだったのか?」
「・・・え」
うっ゛、やっぱわかってたか。
笑われるかなぁなんて思ってたけど、トレインが口を開いた。
「まぁ女っていうのは敏感なんだな」
この10歳児はやっぱ中身は大人だわ。
他の人が聴いたら大人びてるとか思うのかな。
あぁ・・・私はもうそんな子を持つ年になったのか・・・
なんて遠い目をしたときだった。
ニヤッと笑ったトレインから、思わぬ衝撃発言が飛び出した。
「でもよ、本当に子供を作ってみたらどうだ?協力するぜ!」
・・・はぁ?何言ってんのトレインったら!!
そう思ったけど・・・でも本当のことにしちゃえば、傷つかないかな。
「それいいかも!やってみる?」
「・・・は?」
最初に言ったのはトレインなのに、めちゃくちゃ動揺している。
「お、お前それがどういうことかわかってんのか?」
「え?うん」
子供作るんでしょ?・・・あれ。
そこで私は首を捻った。
・・・子供って、どうやって作るんだろ?
錬金術師である私と作るんだから・・・調合?
トレインがどうしようか本気で悩んでる間、私は子供の作り方を考えていた。
人間を練成するのは危険なのに、世の中って凄いなぁ・・・なんて本気で思ってたりして。