黒猫なんてやだ。
だってトレインを思い出すんだもん!!
「トーレーイーンー!!!」
遠慮なく部屋を開けると、そこにいたのは呆然としてた黒髪の男性。
トレイン=ハートネットさん。
“黒猫”と呼ばれてて有名なんだ。
「んだよ・・・」
「あ、ごめん寝てた?」
ちなみに、私は=っていうの。
“治癒の堕天使”という異名を持ってて、錬金術が趣味。
・・・って、紹介してる場合じゃなかった。
「見てみて!」
両手に持ってたものを見せると、トレインはきょとんとした。
「猫?」
「そう、猫!」
私が抱いていたのは、一匹の猫。
黒い毛を持つ猫で、とてもなついてくれてるんだ。
「仲良くなっちゃった♪」
「お〜可愛いじゃん!」
さすが黒猫さん、もう仲良くなってる。
トレインが黒猫を持つと、なんかどう言っていいのかわかんなくなるなぁ・・・
「で、は何が言いたいんだ?」
「そうだった!」
猫を抱いているトレインの隣に座り、微笑ましく見る。
「うん、やっぱ似てる!」
「はぁっ?!」
ニャッ!?
猫と共に吃驚したトレイン。ほら、やっぱり似てるじゃない。
「さすがブラックキャット〜♪」
「おいおい!?」
「ちょっとその子見ててねっ!」
お茶とミルクを持ってきてやるかっ!
私は下の階に下りて行った。
「・・・だって天使とは仲いいんじゃねぇのか?」
トレインさん、何を言ってんですか。
私は死人かよっ!!・・・でもいなかったから突っ込めなかった。
「あっ、おい!」
スルッと抜け、トレインの腕から抜けた黒猫は、開きっ放しにしてたドアから出て行った。
「・・・、怒るよなぁ」
嫌な予感がするとでも言いたそうなトレインの表情。
もちろん、私は知らないわけで。
「トレイン、ミルク持ってきた〜!」
「おうサンキュー!!」
ミルクを渡し・・・あれ?
猫は?
「ねぇ、トレイン・・・猫は?」
「猫?あぁ、あいつなら出て行ったぞ」
「えぇっ!?」
そんなぁ・・・
「せっかく遊ぼうと思ったのに」
「わりぃな」
「別にいいけどさ・・・」
本当は寂しい。
さっきの猫をぎゅーってしたかったのになぁ〜・・・
「・・・なぁ、すっげぇ気にしてんじゃん」
うっわぁ・・・すっごい凝視されてた。
「さ、寂しくないもん」
「寂しかったのか」
「うっ・・・・・・」
ぼ、墓穴じゃん!!
お茶で濁すように一口飲む。
「・・・猫ってね、犬と同じくらい癒されるものなのよ。だからぎゅーってしたかったんです」
爪が痛いけど・・・それは置いといて。
調合で疲れた身体を癒したかったんだよね〜・・・
ふーん、と聞いてたトレインは、なんか怖い笑みを浮かべた。
「わっ、なに?」
私の持ってたコップを取り上げて、机の上まで置きに行くトレイン。
なんだろう?と思ってた矢先のことだった。
「ー♪」
「ぅわぁっ!!」
なっ、なに!?なんで抱きついてくるの!?
「トレイン!」
「なんだー?」
「なんで抱きつくの!」
トレインはニーッと笑って、「俺は黒猫だからなっ」って言った。
いやいや、トレインのとは意味が違うってばーっ!!
「ちょっ、離れてよ!」
ぐいーって押してもびくともしない。
「だってよ、がぎゅーってしてほしいっつったじゃねぇか!?」
「言ったけど、トレインにじゃない!」
「どっちも一緒だ!」
「違うわよっ!!」
抱き締められて身動きが取れない上に、トレインが押すからベッドに転ぶ始末。
・・・はっ!
まさか、なんかヤバイ予感?
「・・・離れろこの化け猫―――!!!」
「化け猫はねぇだろ!」
「トレインなんて化け猫で充分よっ!」
・・・あれ?
なんか、一層トレインがムッとした?
「・・・。地雷踏んだぞ。」
「え?ひゃあぁっ!!!!」
くっ、くすぐったい!!!
やだエロいトレイン〜〜〜〜〜〜〜!!!!
それ以来、私の脳裏には“トレイン=エロい化け猫”と刻まれた。
ブラックキャットぉ?
ある意味、黒かもしれない・・・