なんだか外が煩・。
 おかげで調合に集中できないじゃない!!
「・・・・・・・・・・・・だぁ〜〜〜もぅ!!!!」
 私は溜まらず部屋を飛び出した。





プレゼントを知らない私






「ねぇ〜スヴェン!!」
 階段を駆け下りるとそこに居たのはスヴェン。
 上着を着ていたあたり、これから何処かに行くようだった。
?今日は調合をして過ごすんじゃなかったのか?」
 スヴェンは私の姿を見て驚いた表情をした。
 確かに、私は調合をすればのめり込んでしまう・・・から、普通は途中で降りてこない。
 でもそれとこれは違うのよ!
「煩くて集中できない!!今日って何かあったっけ?」
「今日はクリスマスだろ」
「・・・・・・へ?」

 クリスマス・・・・・・って、あの?
 そういえば、数日前からアジトのリビングでクリスマスツリーがピカピカしてたような・・・
 アレも、イヴたっての希望で置いたんだよね。
 だからクリスマスに誰と行くのか検討がついた。

「そっかー今日だっけ」
「あぁ。そりゃ外も煩くなるわけだな」
「だね!それで、イヴとお出かけ?」
 解ってながらも私は問いかける。案の定スヴェンからは肯定の返事が。
「ねぇねぇっ、何処に行くの!?」
「広場の大きなツリーだよ」
 ふと後ろから聞こえた声に、反射的に後ろに振り向く。
 そこには、スヴェンと同じようにぬくぬくとした格好のイヴがいた。
 うわぁ、すっごく嬉しそう!
 クリスマスを誰よりも楽しみにしてたのはイヴだもんね。

「ツリーかぁ・・・気をつけてね。人が多いだろうし」
「うん!」
 いつもは知的なイヴだけど、今日は可愛い子供に戻ってるみたい。

 私が見送る中、スヴェンとイヴはそのツリーを見に出かけていった。


「・・・さて」
 今日の朝以降、会ってない人物が一人居る。
 イベント好きな彼は、今日はなにしてるんだろ?
「トレインの部屋に行ってみましょうかね」
 買い物に付き合わせちゃいましょう。

「トレイン〜いる??」
 コンコンッとノックをして、遠慮なくガチャリと開ける。
 やっぱり寝てた・・・さすが黒猫さんです。
「トレイン起きて!!ねぇ〜〜起きてよ!!」
 ゆさゆさと身体を揺するけど、コイツ起きやしない!
 ピアスが思いっきり揺れるくらい私自身も動く・・・から、疲れて止まるのもわかる。

「ん〜・・・なんだよ・・・」
 眠そうに、やがてトレインはゆっくり起き上がった。
 それは数分後で、私は疲れ果てて崩れ座ってるところだった。
「はぁっ・・・はぁっ・・・はぁっ・・・」
「何息を荒げてんだ?」
「アンタのせいでしょっ!!」
 ズバッとツッコミを入れる。
 ったく・・・でも、本人は全くわかってない。まぁ、それも承知だけどね。

「で・・・なんだ?」
 あ、そうでした。トレインを起こすだけでこんなに疲れてちゃダメなんだよね。
「あのね、買い物に付き合って欲しいんだよね」
「買い物ォ?そんなの姫っちと行けよ」
 珍しく否定的なヤツ。
「イヴはスヴェンとツリー見物してるんだもん」
「ツリー?」
「今日はクリスマスよ?忘れてたの??」・・・私も忘れてたけど・・・。
 すると、以外とトレインは普通に返してきた。
「ふーん・・・ま、いっか」
「付き合ってくれる?」
「あぁ、いいぜ」
「やった!」


 クリスマス真っ最中。
 私たちは掃除屋の仕事を一時休止し、スヴェンたちに見習って外出をすることに。
(といっても、私が誘ったんだけど)


 私とトレインが向かった先は、とある大きな書店。
「調合の書でも買うのか?」
「ううん」
 トレインは人の多さにうんざりしながらも、私に付き合ってくれる。
 そんな優しさが不意に嬉しくなるのよね。
 それにしても・・・辺りは人、人、人!!
 ツリー付近にも、街にも、もちろん書店にも人がいっぱい!!!
 それだけならいいんだけど・・・人の中にも、男女のカップルが9割を占めてる!!

「はぁ〜〜・・・なんでこんなに人が多いのよ・・・」
「だな!しかもカップルばっかだ」
 トレインはニシシと笑って、続けた。
「なぁ、オレらもカップルみたいだな」
「えぇっ!!?」
 とある本を探してた私は、身体を180℃回した。
「え・・・み、見えるのかな??」
「なんだよ。オレじゃイヤなのかー?」
 そう言ってるけど、そうじゃないことは本人もわかってるくせに。
 ほら、ニヤニヤしながら聞いてくる猫がいます。

「ほら、もういいからトレインも探してよー!!」
「オレにはが何を探してるのかさっぱりわかんねぇ!」
「そんな自慢げに言わないで!」
 まったくこの人は・・・・・・でも、おちゃらけてないとトレインらしくないもんね。

「あのね、実はイヴにクリスマスプレゼントを買ってあげようと思ってるの」
 するとトレインの目が輝いた。
「おぉー!姫っち喜ぶぞ!!で、何の本を買ってやるんだ?」
 うん、それなんだけどね・・・と私はこの先のコーナーを見据える。
「錬金術書・・・」
「うぉっ!!おまっ、姫っちを自分と同じ錬金術師にさせる気かっ!?」
 トレインは、まるで漫才師がずっこけるようなリアクションをくれた。
「・・・じゃあ、何がいいのよ」
 ムッとして私は突っかかってみる。
 すると、トレインはう〜ん・・・と考え込み、やがて吃驚マークを掲げた。
「英語辞書とかはどうだ!?」
「却下」
「じゃあ絵本とか!」
「却下。イヴを何歳と思ってるわけ?」
「それじゃ、小説とかはどうだ!?」
「却下・・・・・・・・・ん?」
 小説、ねぇ?
 確かにイヴはいろんな本を読んでるけど、全部難しいものばっか。
 だから、私の錬金術書とかを貸してあげたら嬉しそうにしてるんだけどねぇ・・・
(しかも、どんなに分厚くても1日で返ってくるし)
 でも、小説を読んでる姿は見ないような気がする。
 小説の方がいろんな感情を知るには良いと思う。うん、決めた!!

「トレインありがとう!私小説をプレゼントにする!!」
「おっ、役に立ったか!?ミルク奢れよー」
「奢らせていただきまーす」
 と、トレインの言葉を冗談にして私は小説選びに取り掛かった。
 う〜ん、いっぱいあって迷うなぁ〜・・・ここは、分厚い本がいいよね。

 結果、私は『HEAVEN STREET』なんて題名の本を買うことにした。
 内容が、私が惹かれたからなんだけどね・・・
 とある学校が舞台で、鎌に変身する少年と使い手の少女が妖怪みたいなのを退治するお話。
 鎌に変身するってのが面白そう。イヴにあげるんだけど、また読ませてもらおう!

 ラッピングしてもらって上機嫌の私に、トレインは一言。
、オレにもプレゼントくれよー!!」
「え?プレゼント??くれたらいいよ」
「ん」

 ・・・えっ!?
 途端、トレインのどアップが見えた。
「〜〜〜〜〜〜!!!!」
 ・・・つか、私トレインにキスされてんじゃん!!!

 数秒したら、トレインは離れた。
「ホラ、やったぞ」
「ちょっ、いきなり何するの!・・・じゃない。なんでキス!?」
「クリスマスプレゼント、欲しかったんだろ?」
 ニカッと笑顔になるトレイン・・・そうきたか・・・(なぜか感心する私)


「・・・いいよ、奢ったげる・・・」

 はっきり言って、嬉しくないわけじゃない。


 トレインは、一番クリスマスに関心がなかった。
 なのに・・・プレゼントに一番嬉しそうなのはコイツなのよね。


 でも、きっと一番嬉しいのは私だと思うよ。