「・・・?」
 呼ばれたはずの、から汗がどっと溢れる。
「え・・・なんで私がいるの?」
 コレは、吃驚したトレインから発せられた言葉だ。

 を凝視しているトレイン、トレインを凝視している

「な、なぁ・・・まさか・・・」
 が似合わない口調で話す。
「うん・・・多分そのまさかよ・・・」
 トレインも似合っていない。

「「入れ替わってる!?」」





調合中に失敗! (その2)






 それは、前回と同じだった。
 は調合していて、トレインはベッドからそんな彼女を見ていた。

 今度は試験管を置いて、は伸びをする
 そこは大丈夫だったんだけど・・・

「スモールブレッドを改良してみたっ!!」
「へぇー。で、どういう効果があるんだ?」
 トレインの声で、は首を傾げる。
「・・・さぁ?」
 トレインはベッドから起き上がり、伸びをした後、再び試験管を持ったの元に向かった。
「でも、綺麗な色じゃない?」
「お、本当だ」
 の手から、トレインの手に試験管が渡るときだった・・・

「「あっ」」
 不覚にも、丁度二人が手を離してしまって、ソレはとトレインの間で堕ちてしまった。
 割れることはなかったが、半分がこぼれてしまった。

「あーあ・・・え?」
「わりぃな・・・お?」
 突如、こぼれたところから練成陣が発動した。
 ソレはとレインとの足を軽く超えていた。

 練成陣が光を発し、二人はその中に包まれる。

「え・・・ちょっと!」
「おいおい、大丈夫なのか?」
 二人の心配をよそに、練成陣は尚も光を発す。


 光が止まったとき、いつの間にか二人は座り込んでいた。

 そして、物語は冒頭に戻る。


「おいおい、コレどーするんだよ!!」
「ど、どうしよ・・・」
 スモールブレッドと同じ、効果は3時間ほどなのは分かるが・・・
 はっきり言って、なんだけど、体はトレインなワケであって・・・
 喋り方が気持ち悪いのは気のせいだろうか?(いや、そんなわけあるはずない)

「と、とりあえず今回は外に出るなよ!!いいなっ!?」
「も、もちろん!!トレインこそ出ちゃダメよ!!」
 動揺しつつも、二人はの部屋から出ないことを確認しあった。



 トレインの姿のが試験管を拾う。
 あと、3分の1は残っている。

「コレで調合したいんだけどな・・・」
 すぐにトレインの制止する声が入る。
「無理だ。俺には出来ないぞ」
「分かってるわよ」
 そっと試験管をいつもの場所に立てる。

 こうみると、試験管を立てるトレインというのはなんとも珍しい。

「で、どうするんだ?」
「どうするも・・・このまま元に戻るのを待ったほうが」
ー」
 (トレイン)の声が最後まで聞くことなく、部屋に入って来たのはイヴだ。

「・・・トレイン。なんでいるわけ?」
 イヴの登場にそれぞれが吃驚して声も出ない様子だったが、振られた(トレイン)は目を泳がせる。

「え・・・・・・あー・・・なんとなく・・・だ」
 取ってつけたようなものまねに、トレイン()は少し噴出す。
 しかしイヴは「ふーん」と怪しむことはない。
「それよりも、今日は錬金術について勉強する日だよ?」

 は心の中で「ヤバイ・・・!」と叫んだ。
 そう、今日は前々から、イヴと勉強をする約束をしていたのだ。
 と言っても、今の体の中にいるのはトレイン。
 絶対勉強なんて出来ないだろう。
「えぇっ!?」
 案の定トレイン()は吃驚している。

「あーえっと・・・」

 何か理由は・・・と、(身体はトレイン)はキョロキョロと辺りを見回す。
 ふと、目に入ったのはトレイン(身体は)の腰にかかる愛銃『ラピス』。
「あ・・・あー!今日はダメなんだよな、

 自分の名前を自分が呼ぶとは思わなかった・・・と、内心泣きながら(トレイン)は言った。
 トレイン()も釣られて頷く。
「・・・なんで?」
 イヴの目が冷たい。
 うぅ・・・罪悪感がある・・・けど、トレインに錬金術は語れない。
 (トレイン)は拳を作った。
「ハーディスの修理。大至急で・・・」
「そうそう、急にしないとダメな・・・の」
 危うく地を出しそうになったトレイン()は急いでいつものの口調を真似た。
 少し面白くて、(トレイン)は悟られないように笑っている。

「そっか・・・じゃーまた、絶対教えてよ!」
 イヴはトレインにが盗られたのがイヤなのか、向きになってに言った。
「うん・・・(よかったー!!)」
 トレイン()はイヴの気迫に驚きながら、頷く。


 イヴが部屋を出て行ったとき、二人はやっと解放されたようにため息をついた。
「「はぁ〜〜〜・・・」」
 項垂れ、しばらく疲れた声を出していた。


、お前なんでそんな約束してたんだよ・・・」
「だって・・・こんなことになるとは思わなかったんだもん」
 疲れたトレイン()はベッドに転ぶ。
「・・・ちょっとトレイン。スカート乱れるから止めなさい」
「ソレは無理な話ってもんだな」
 トレイン()はニヤッと不敵に微笑んだ。
「エロ猫が・・・!!」
 (トレイン)が拳を握ったそのとき。

「トレイン!!いるのかー?」
 ふと、隣の部屋の前からスヴェンの声が聞こえた。
「スヴェン!?」
 トレイン()は咄嗟に起き上がった。
「なに?どうしたの??」
「お前がいると余計厄介だ!隠れろ!!」
 ベッドに押され、布団を被せられた(トレイン)
 確かに本人がいると話が長引きそうだろうが・・・トレインはちゃんとの演技が出来るのだろうか?

、いるかー?」
 案の定、隣の部屋であるのところにスヴェンは来た。
「なに?」
 ドアを開けると、スヴェンは中に入って来た。
「トレイン知らないか?」
「さぁ?」

 布団の中で、(トレイン)は感心していた。
 さすがトレイン、彼の演技は完璧に等しい。

「そうか・・・じゃあ、コレ渡しといてくれ。新しい銃弾を買ってきたってよ」
「うん・・・分かった」

 コレで終わりか・・・と、(トレイン)が安心したときだった。


「・・・、お前今日はなんか変だぞ?」
 ドキ――ッッ!!!!
 (トレイン)、トレイン()は心臓が止まるかと思った。


「そ、そう?」
「あぁ・・・」
 スヴェンは怪訝そうな眼差しを向ける。
「だって、調合中だろ?そのときは集中してるから止めるわけがないはずだぞ?」
「あ・・・あー実は、終わったばっかりで・・・」
「それに、トレイン用の銃弾を貰って少し嬉しそうに見えるのは俺だけか?」

 (トレイン)は心の中で叫んだ。
「(トレインのドあほ〜!!!!)」

「き、気のせいよ!」
 どうにか訝しげに見るスヴェンを追い出し、トレイン()はハァーッとため息を付いた。

「全く、調合なのは分かるけど嬉しそうにするんじゃないわよ!」
 (トレイン)は、とりあえずコレが言いたかった。

「だってよー、誰だって嬉しいだろ?」
「いざとなったら作ってあげるから!」
「お、マジでか!?サンキューな!!」
「だから・・・あーもういいわよ・・・」
 トレインの楽天は天晴れものだと、(トレイン)は苦笑する。


 3時間後、二人は無事、元に戻れたのだが・・・


「イヴ、今日はと勉強会じゃなかったのか?」
「スヴェン。トレインのハーディスを直さなくちゃいけないんだって。」
「ハーディスだって?トレインは出かけてたんじゃなかったのか?」
「ううん、の部屋にいたよ」
「・・・そういえば、なんか変だったな・・・」
「スヴェンも思った?私もなんか変だと思った」

「・・・新しい遊びでもしてんのか?」
「さぁ・・・?」

 と、スヴェンとイヴはしっかり二人の異変を疑っていたのだった。



 やっぱ無理があるぞ、二人とも・・・