ドンドンッと聞こえる。
ベランダに出てくる私が見たものは、あなたの久しぶりに見る真剣な姿。
あぁ、かっこいい。
私はそう思って胸を高鳴らせる。
もちろん、口には出さないけどね。
ドンドンっと聞こえる。
あっ、今日もやってるんだ。
そう思って、私は眠たい体を起こし、ベランダに出る。
もう、深夜の1時を回ってたんだけど、トレインはこんな時間から銃の連続撃ちの特訓を始める。
特訓と言っても、腕が鈍らないように慣らす程度ですぐ終わるけど。
私は、そのトレインを見てるのが好き。
ドンドンドン!!
トレインの気に障らないように、そっとベランダに出る。
アジトの近くの丘に、トレインはいる。
そこで、珍しく真剣な面持ちで構えてる。
ドンドンドンドン!!!
結構響いてるんだけど、スヴェンやイヴは慣れっこな様子で平気で寝てるんだろうなぁ。
でも、私は眠れないの。
私ね、いつものトレインも好きだけど、あの真剣なトレインも好きなんだ。
いつものトレインが好き・・・って、よく言ってる。
トレインも返してくれる。
私たちは恋人同士。でも今、声はかけない。
「・・・邪魔になっちゃうもんね。」
ドンドンドンドンドン!!!!
うわお、凄い数の銃弾を撃っていくなぁ。
こりゃ、近いうちにメンテナンスしなきゃなぁ・・・と思いながら、私は眼の中にトレインを入れる。
別に、見つかってもいいんだけどね。
ただ単に邪魔したくないから声をかけないだけで、吃驚はしないんだけど・・・
「お、ー!?」
「ほぇっ!?」
・・・大声で呼ぶのは止めて欲しい。
トレインはそこから私の姿を見つけたみたいで、さすが黒猫さん、目がいいなぁなんて思っちゃう。
「ごめん、邪魔しちゃった?」
少し大きな声で言うと、トレインは「別にーっ」と大声で返してきた。
「なぁ、こっちこいよ!!」
「・・・うん、わかった!」
確かに、大声で話すのも恥ずかしいもんね。
肯定の答えを返し、毛布を持って部屋を後をした。
場所は分かるんだよ。
だって、いつも見てたもん。
気付いてる気付いてない関係なく、なんか日課のようなのかな?
思えばいつも見てた。
「やっほ」
毛布を被って丘を登ると、丁度6発全弾打ち終わったみたいで弾を入れていた。
「おう」
「邪魔する気はないからね。見てていい?」
するとトレインはニッと笑って
「あぁ。いつも通り見てな」
あぁ、知ってたんだ。
でも、別に疚しいことでもなんでもないし、いつもどおり横からトレインを見る。
私が近くにいるのに、顔は真剣な表情に戻ってて、全神経を銃口に集中している。
ドンドンドンドンドンドン!!!!
・・・6発打った。
全弾打った結果、標的にしてた缶は穴が一つしか開いていない。
「缶変えてないの?」
「ん?あぁ」
・・・ってことは、今まで打った弾全てがあの一つの穴に貫通しているってわけ?
すごい・・・。
ハーディスもトレインに持ってもらって幸せだわ。
「で、何でいつもベランダから見てたんだ?」
銃弾を入れるとき、ふとトレインが口を開いた。
「・・・いつもと違ってかっこいいなぁって・・・思って」
初めて言った。
でも、恥じらいはなかった。
「そりゃ、どーも」
カチンッと音を立てて入れ終え、もう一度構える。
ドンドンドンドンドンドン!!!!
「あっ、最後の一発外した」
しかめっ面になったトレインは缶の方に行く。私もついていく。
ほんとだ、少しずれてる。
「・・・動揺しちゃった?」
「・・・そうかもな」
素早く6段全て装弾し、ホルスターに入れた。
「さ、練習は終わりだ。帰るぞ、」
「うん」
私はトレインの後ろをついていく。
「・・・ねぇトレイン。明日も来ていい?」
「聞くまでもねェよ」
それからも、ドンドンッと聞こえ出す。
でも、今までとは違って、とても近い。
今度はトレインの傍で、やっぱり私はかっこいいと思っているのだった。