「・・・・・・・・・・・・」
 ジ―――ッと見られて、本人は大変迷惑をしているのだが。
「・・・・・・ね、ねぇ?なに?」
「・・・・・・・・・・・・」
 見られていることじゃなくて、今のこの状況事態に困っているのかもしれない。

「お姉ちゃん、僕のお嫁さんになって!」
「・・・だからさあ・・・・・・」





婿のエントリーは?






 もう、30分はこれの繰り返しだろう。少女 ―― のスカートを掴んで離さない。
 彼女の隣下に、男の子が引っ付いているのだ。


 きっかけは、ほんの些細なことだった。
 絡まれてる男の子を助けたこと・・・これだけだ。
 よってには男の子の名前も、歳も何も知らないのに嫁になれるわけがない。・・・絶対。


「ね、ねぇ・・・私帰りたいんだけど」
 材料の収穫はもう終わっていて、後は帰ればいいだけなんだけど。
 子供の癖に、握力なんてめちゃくちゃ弱い癖に、何故か離してくれない。
「ね、もう帰らないとお母さんが心配するし」
「やだっ!!!」

 ・・・・・・ふりだしに戻る。みたいな?

「・・・じゃあ、君の名前を聞かせてくれる?」
「カレット=フィアユード!」
「カレットって言うのね」
 この子は多分、6歳くらいだろう。
 見た目だけで判断するのは悪いことだが、そうは判断した。
 それにしても、フルネームで言わなくてもいいのに・・・

「お姉ちゃんは?」
 ふとカレットはの方を見た。
「私は
!」
 ・・・呼び捨てかい。
 ま、いいか。悪い気はしない。


「お家は何処?お母さんに会いたいんだけどなぁ」
「案内するっ!!」
 カレットはのスカートをぐいぐい引っ張って先に進んだ。
 別に中にスパッツを履いているからどうってことはないのだが、人目が気になって仕方がない。
 はカレットの隣に並ぶことでその恥ずかしさを打ち消した。

 やってきたのは少し離れた場所。
 そこにひっそりと建っていた。
「ごめんくださーい」
 しばらくすると、母親らしき人物が慌てて出てきた。

「カレット!」
「おかーさんだよ」
 出てきた途端、母親はカレットを抱き上げる。
 しかしカレットはのスカートを離す気はないらしく、結局のスカートも上がってしまうのだ。

「あっ、ご、ごめんなさい」
「いえ、スパッツ履いてますし」
 カレットをこんなに心配しているあたり、母親は彼のことがとても好きなんだなっと思うと、
 自分に両親が居なかった日々を思い出してしまう。


「あなたがカレットを助けてくださったのですか!?ありがとうございます!!」
 母親はに向かって謝る。
「あのねー僕、と結婚する!」
 母親によってスカートは離されたが、カレットはまだそう言っている。

「うーん・・・・・・」
 の脳裏にふっとよみがえった人物。
 そして、木の上からの視線。


「ごめんね、お婿さんの募集はもう締め切ってるの」
「えーっ!?」

 先着一名様の空きは、もう埋まっていた。






 母親にお礼を言われ、カレットに泣かれ、ようやくは帰路に着くことが出来た。


「はぁ・・・疲れたー・・・・・・」
 帰ったときにはもう9時を回っていた。

、遅いぞ」
「ごめんね、スヴェン。子供に懐かれて帰りようがなかったのよ」





 やがてスヴェンが出してくれた夕食を食べていると、トレインがやってくる。

、ところでお前の婿に当選したやつは誰なんだ?」

 やっぱり、聞いてやがったか。

 実はは知っていたのだ。
 家の傍の木の上に、楽しそうにトレインが聞き耳を立てているのを。





「決まってるじゃない」
 知っててなお、聞いてくる人よ。

「あなたしかいないでしょう?」