アジト内はいつだって賑やかだ。
 静寂という言葉はまるで似合わない。
 そして、必ずその騒ぎの中心に立っているのはトレインと
 そう、一例を挙げると・・・あれは、ついこの間のことだった。





大嫌いなアレ!!






「きゃぁああ―――――っっっ!!!!」

 リビングでそれぞれがくつろいでいたとき、洗面所から悲鳴が聞こえた。
 トレイン・スヴェン・イヴはその声を聞いた途端ザッと立ち上がり、悲鳴がした方へ向かった。
 そう、悲鳴を上げたのはだ。

っ!?」
「どうした!!」
「何かあったの?」

 は挙動不審な様子で下をひたすら見ていた。
 目には涙を浮かべ、3人を見た途端、天井に指を差して泣き喚いた。
「あ、アレが出たっ!!」
「「「アレぇ?」」」
 いつも楽しそうに戦闘をしているは、こんなに怯えることはない。
 久々にこんな様子を見て、トレインは面白そうに笑った。

「アレってなんだよ」
「・・・えーと・・・・・・と、とりあえずトレイン、私たちは向こうに行っておこう?スヴェン、イヴ!後よろしくっ!!」
 真っ青なはけらけら笑うトレインを連れてリビングに向かっていった。



「トレインを連れて行くということは・・・」
「私たちが、ゴキブリをやっつけるの?」
 しかし、トレインとの二人が怖がって暴れたらシャレにならない。
 
「やるよ」
「やるか」
 アジトを壊されては堪らない、と二人は構えた。









「ちょっ、おい!」
 ぐいぐい押されて今にも転びそうだったトレインは、案の定、

「ぅわっ!」
「へっ!?」

 押されすぎて前に倒れこんだ。

「あ・・・大丈夫?」
「大丈夫なわけあるかどアホ!」
 トレインの額には結構立派なこぶが出来てしまっていた。

「あちゃ・・・ごめん、治します」
 座り込んで、トレインと同じ目線になったはそっと両手を額に翳した。
「どぉ?」
「おぉ〜痛くなくなってきた」
 こぶは徐々におさまり、トレインの機嫌もよくなってきたところ・・・だが。

 その刹那、の顔がピシッと固まった。


「っひゃあぁっ!!!!!」
「どうしたっ!?」

 の手がヤツを指差す。

「あ・・・アレがいたっ!!!」
「アレぇ?だからアレってなんだ・・・」
 につられてトレインが見たものは ―― ・・・



「っ!!ゴキブリっ!?」



 トレインの顔も、瞬時に固まってしまった。








「ヤバイぞイヴ!リビングにいっ・・・た・・・」
「スヴェン、どうしたの?・・・・・・やっちゃったか」

 戦闘態勢に入っていた二人は一気に脱力してしまった。



「いやぁ〜こっち来ないで!!」
 バシンという乾いた音の後、赤い光が発せられてトゲが出ていた。
 の元に行ったアレは間一髪、飛んで錬金術を逃れ、

「こっちにも来るなァ!!!!」
 ドゥンドゥンという乾いた音の後、壁に5つほど穴が開いていた。
 トレインの元に行ったアレは間一髪、走って銃弾を逃れた。


 部屋中、ワヤ。
 ぐちゃぐちゃになっていたのだ。


「だあーっ!!止めろお前ら!!」

「「スヴェンが捕まえないからでしょ(だろ)!?」」

「イヴはどうなんだよ・・・」






 ゴキブリ騒動は、の錬金術のトゲが見事に貫通し、無事幕を閉じた。

 アレよ・・・忍び込む家をもっとよく考えなさい。


 アレが出た度に、こんな騒動が起きているのだ。
 イヴに到っては既にリビングに姿はなく、自室で本を読む始末だ。

 とりあえず、トレイン&は毎度こんな騒ぎを起こす。

 そう、今回は一例なだけなのだ。