とある日、アジトにて。
スヴェンとイヴは買出しに出ていた。
トレインは、自室で昼寝をしていた。
そしてはというと―― ・・・
「もう少しでプレリシスブレッド(麻痺弾)の完成だぁ・・・」
彼女は机の前に座っていた。
いつもは整理された机の上は、いろんなもので溢れている。
20本ある試験管は半分ほど使われていて、いろんな色で染まっていた。
10個あるフラスコは8つ使われていて、何回も洗いに行っている。
中心には、ぐつぐつと小さな釜の中のお湯が煮だっている。
どれものオリジナルのもので、綺麗な装飾がされている。
「この実に痺れる元が入っていたとは思わなかった・・・」
脇にあるのは緑と黒の表面をしている実。
赤い色をしている中身はとても美味しいのだが・・・
ある物質を混ぜることによって麻痺効果が出る事のを知ったらしく、は今相手を麻痺させる銃弾を調合中だ。
そして、一般人は昼食を食べるという時間が過ぎた時。
「で、出来たぁ・・・っ!」
掌に乗っているのは一つの銃弾。
そう、『プレリシスブレッド』がたった今出来上がったのだ。
「はぁー・・・疲れたぁ・・・・・・」
出来た感動のためか、は思いっきり嬉しそうに微笑んでいる。
「そだっ!トレインに見せてこよ〜!」
と、思いっきり立ち上がった・・・が、次の瞬間。
立ち上がった拍子に椅子が後ろに飛び、戻ってきたその椅子の足の部分がの膝にぶつかった。
「ふえっ・・・・・・!?」
そして、バランスを崩したは、机にぶつかってしまった。
静寂を包んでいた家中に
ガンッ
ゴトッ
バシャアッ
「ぅあっつ――――いっっっ!!!!!!!」
たった今まで喜んでいた少女の声が響き渡った。
「っ!?どうした!?」
すぐに今まで寝ていたトレインが駆けつけた。
それはそうだろう。隣の部屋で思いっきり叫ばれれば目だって覚めてしまう。
「熱い熱いっ!!」
ぶつかった拍子に、机の上から釜が落ちたのだ。
試験管とフラスコは無事だったにしても、端によっていた釜が落ちた場所は足首。
不幸中の幸いは、釜が割れなかったことだろう・・・。
はしゃがんで涙目で叫んでいる。
「火傷した〜!!」
はぁっ!?と返したトレインだが、やっと事実がつかめたのか、
「風呂場にいくぞっ!!」とを抱きかかえて急いで走った。
階段を下り、そのまま風呂場に行き、急いで冷たいシャワーを足にかける。
「あっつい!!熱い熱い熱い〜〜!!!」
「ちょっとじっとしてろっ!!」
暴れるを抑えつつも、トレインは冷水をかけ続けた。
時期に痛みは引き、同時には大人しくなっていった。
「落ち着いたか?」
「うん・・・・・・」
涙は流れるものの、はきょとんとして頷いた。
それを見てトレインははぁ〜っとため息をつく。
「かけてな。包帯取ってくるから」
の頭を軽く撫でて、リビングに向かった。
「はぁ・・・熱かった・・・・・・」
やっと冷静になったは、次第に申し訳ない気持ちでいっぱいになってきた。
きっとトレインは今までぐっすりと眠っていたに違いない。
それをたかが火傷を負ったくらいで騒ぎ立て、眠気を覚ましてしまった。
「どうた?」
包帯を持ってトレインが帰ってきた。
「・・・ごめんね」
「はぁ?なんだよいきなり」
「気持ち良く寝てたでしょ?」
タオルで拭くと、真っ赤に腫れていた。
「・・・あんな声を出されちゃな」
「・・・起こしちゃったんだね・・・」
トレインは器用にの足首に包帯を巻く。
「あれだけの悲鳴なら誰だって起きるだろ?」
再びの目から涙が零れ落ちる。
「お、おい!泣くなって!!」
「だってー・・・たかが火傷なのに騒いじゃって・・・・・・」
熱かった。
突然のことでびっくりした。
―― でも、邪魔をするつもりはなかった。
の涙を見たトレインは困惑の表情を見せていたが、不意にの腕を掴んだ。
「あのなぁ、別に騒いでもいいんだぜ?」
「・・・へ?」
ちょっと照れたように、でも、はっきりと言ったトレインが珍しくて
「が騒ぐくらいなんだから、大変なことが起こったに決まってんだろ」
そんなトレインを好きな自分がここに居て
「だから、眠りくらい遮ってもいいんだよ。なんだから」
はしばらくして、微笑んでしまった。
「うん・・・、そうする・・・ありがとう」
「どーいたしまして」
なんて幸せな微笑だったのだろう
なんて幸せな私なのだろう
思わず涙も止め、トレインと共に微笑み合ってしまった。
「で、何を造ってたんだ?」
「へ?」
リビングに移動して、少し遅い昼食を取ろうと準備をしていたは、疑問符をつけて聞き返す。
さすがに動かすと痛いのか、少し片足を引きずっている。
「調合中だったんだろ?」
「・・・あぁ、そうなの!!みてみてトレイン!!プレリシスブレッドの完成〜!!」
いつもの二人がいる。
でも、距離はグッと縮まったようだ。